日本ではオーガニックコスメが定番となりましたが、オーガニックコスメによる「接触性皮膚炎」や「経皮感作(アレルギー症状)」についてはまだあまり深く知られていないようです。
一番有名になったのは、「お茶せっけん」に含まれる小麦由来の成分でしょうか。
大人に使う分には、お肌に合わない場合はただ単にかぶれるだけで「食物アレルギー」にまでは進行しづらいそうであまり注意されていないのだと思いますが、
赤ちゃんや幼児など「その食材を食べたことがない人」の肌にオーガニックコスメを塗るのは相当なリスクがあるようです。
オーガニックに先進的だった欧米では10年以上前からこの因果関係が疑問視されてきているようで、オーガニック歴の長い順番から「ヨーロッパ先進国→アメリカ・カナダ」の順にピーナッツアレルギーやナッツアレルギーが広がっていったようです。
(関連機関の情報やニュースを確認して得た知識ですが、間違えていたらコメントくださいm(_ _)m)
今回は、アメリカのNew York Timesが被害者家族の声を取り上げた記事を見つけたので、ザックリとですが訳してみたいと思います。
NYTはアメリカ国内の新聞社の中でもとりわけマイナーな声を取り扱うことで有名で、問題提起が目的の記事なので結論はないのですが、知識として持っておくと今後の保湿剤選びがラクになるかと思います。
では行ってみましょう。^^
初めて口にしたのに重度アレルギーに?!
数年前までは、アメリカでも「食物アレルギーで呼吸困難になって命を落とす例」の代表的なものは「魚介類」だったようです。
「小さい頃からエビを繰り返し食べている間に、アレルギー値が高まってエビにアレルギーを持つようになった」というもの。
でもピーナッツアレルギーの場合、ピーナッツなんてロクに食べた事ない赤ちゃんとか、ちょっとしか食べたことのない2、3歳の子がそうなるんですよね。
論文などでは「離乳食を開始して、ピーナッツバターをあげたらいきなり嘔吐し、食物アレルギーが発覚」というケースも見られました。
「食べたことがないのに、どうしてアレルギーに?」
お母さんはかなりショックですよね。。
で、それはどうしてなの?っていう原因を探求するようになり、「ピーナッツを食べたことのない乳児期にピーナッツ入りの保湿剤を塗るとアレルギーが成立する」という説が浮上しました。
アメリカではピーナッツバターはもっと昔から食べられているのにこれまでアレルギーはそれほどなかった。
それなのにどうして最近になって爆発的にアレルギー患者が(しかもピーナッツを食べたことのない乳幼児に)増えているのか?
この疑問が一大トピックになり、アレルギーを発症した子供たちを追跡した結果、「保湿剤に含まれる植物オイル」にアレルギー反応を起こすことが分かりました。
ここから、2011年4月の記事です。長いので読み飛ばしながらどうぞ。
"Allergies Can Be Natural, Too" - New York Times, 2011年4月27日
「プロペトは使いたくなかった。」
農業とテイクアウトレストランを営むMadison-Sauerさんは、食べ物だけでなくコスメティクスにもなるべく自然派でいようと試みている。第1子のWaylonくんが生まれた時、オーガニックの保湿剤(「NaTrue」というオーガニックブランドで、バイオダイナミック農法を使ったカレンデュラをベースにしたもの)を使った。
しかし、彼女が第2子のAmosくんに最終的に使うようになったのは「Hydrolatum(ワセリン由来の、大きなプラスチックの容器に入っている)」だった。
Amosくん(当時2歳半)は、食物アレルギーを発症し、その後アトピー性皮膚炎と湿疹を発症した。彼がアレルギーを持つのは、オーガニック製品の中に保湿成分として含まれる「木の実、ピーナッツ、種子とココナッツ(油分として)」である。「高額なオーガニック保湿剤には、よりアレルゲンが含まれている。純度が一番高いから。」
トロント在住で食物アレルギーの8歳の子をもつ母であるBordenさんはこう話す。子供はピーナッツ、ナッツ、キウィにアレルギーを持っている。「Dr. Hauschka」は認定されたオーガニックブランドで、この製品にはオーガニックのアーモンド油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、マカダミア油、アルガンオイルが使われる。
ニューヨークの医療機関のDr. Maryann Mikhail によると「木の実アレルギーはI型のアレルギーで、命に関わる危険性がある。」とされる。一方、通常はIV型の接触性アレルギーで「命の危険性はない」が、「重大な湿疹を起こす」ことがある。
皮膚科医のDr. Amy Wechsler (自身の子供が鮭にアレルギーを持つ(以前は卵にも))は「保湿剤を手にしたら、原材料をすべて読むように。思わぬところにアレルギー物質が見つかることがあるから。」と話す。
しかし、アメリカの原材料表示はヨーロッパやカナダよりも柔軟で、さらに長い薬品名を解読するのは困難だ。
メーカーに問い合わせると「医師に相談してください」と言われ、医師に問い合わせると「メーカーに確認するように」とたらい回しにされる。ナッツに食物アレルギーは持っているけれど、保湿剤に含まれるナッツの成分には何も反応が起きない場合もあるから混乱を呼ぶ。
製造メーカーとしては、原料を加熱もしくは薬剤により処理することでアレルゲンを除去している。
「Cetaphill」では「当社独自」と呼ばれる処方で非アレルゲン化したスイートアーモンドオイルとマカダミアナッツオイルを使っている。(対策方法の詳細は不明)
カレンデュラのベビー製品の製造メーカー「Weleda(Madison-Sauerさんの息子 Amosくんがアレルギーになった保湿剤のメーカー)」ではリスクを取り除くため原料の油を華氏400度(=摂氏でいうとおよそ204度)で加熱後、フィルターにかけている。
「ですから、もしアーモンド油に対して重大なアレルギーをお持ちなら、健康増進のためにはお使いにならないことを推奨します。」と Jennifer Barckley氏(ヴェレダ社北米、コーポレート, エデュケーションディレクター)は話す。
精神病医師のDr. Wechslerは「ツリーナッツアレルギーがあるのに、それが含まれている保湿剤を塗るのは精神的におかしい。子供には影響のないようにしてほしい」と話すが、
小児科、アレルギー、免疫学の教授であるDr. Xiu-Min Li(自身の子が魚介類、はハーブのお茶や入浴剤、クリームを自身の子供のために作ったが、「両親が病的に心配になるのは理解できる」としたうえで「とにかく未精製の原料は信頼できないということです。」と語る。
「食べれないものは皮膚に塗るべきではありません。もし自分の内臓に塗りたくないのなら、体の最大の器官である皮膚にも塗りたくないと考えるのではないでしょうか。」
まとめ
いろいろな言い分があるようですが、この記事の要旨を以下にまとめますと・・・
- オーガニックの未精製の植物オイルには、アレルゲンとなりやすい物質がそのまま含まれている。
(それがオーガニック製品の魅力なのだけれども、バリア機能が未熟な皮膚には仇となる) - 食物アレルギーがあるけど塗るのは平気、というケースもあるから余計混乱する。
(この人は大丈夫なのでみんな大丈夫、という誤解に繋がる可能性がある) - セタフィルやヴェレダは、原料のオイル中のアレルゲンを除去するために処理を施している。
(とはいえ、保湿剤の成分中にアレルギーがあるなら使わないように呼びかけている) - 食物アレルギーがあるなら、塗らないのが基本。
(皮膚は私たちの体の中で「最大の器官」であることを忘れない)
つまり、食物アレルギーがあるなら未精製のオイルは塗らない方が良いのかもしれません。
ちなみに、ピーナッツオイルは日本で売られている保湿剤にはあまり普及していませんが「オリーブ、ホホバ、アルガン、マカダミアナッツ、ココナッツ、アーモンド」などのオイルは当たり前のように入っています。
これぜんぶツリーナッツ。
ツリーナッツもアレルギー反応は強めのようなので、ナッツ系の植物オイルを使う時は様子を見ながら使うようにしたいものです。
(ホホバオイルやオリーブオイル、アルガンオイルはアレルギーになりにくいという説はありますが、未精製のものにはアレルゲンが含まれているのでこれも注意)
なお記事内で「Weledaとしては加熱・フィルターをかけてアレルゲンを除去している」とありますが、一方で、ピーナッツオイルとピーナッツアレルギーの因果関係を研究した2003年のイギリスのチームによると「精製されているものでもアレルゲンは微量ながら残っている」という報告があります。
じゃあ何にも使えないじゃん!みたいになってしまいますが、(実際私はそうなりました・・・)
冷静に考えて、結局我が家では、「私たちがよく食べるものが含まれている保湿剤は避ける。入っているものでも、比率の低いものや未精製のものにして、様子を見ながら使う。」という結論に至りました。
補足)食べ物の方、どうやって進めたらいい?
食べる方のナッツは、アレルギーにならないようにするにはどうしたらいいの?
私もそれが気になってました。これも気をつけないとですよね。
じつは↑の記事、続編は出ておらず、その後は2013年ぐらいから、「ピーナッツ協会」なる団体から「ピーナッツオイルはほとんどが加熱処理されているから、アレルゲンにはならない!全くの言いがかりだ!」という抗議があり、、、
そうしたら今度は民間団体から「少数派の意見だからといって、見過ごさないで!!」と反発があり、、、
2016年まではカオスな感じだったようです。記事はあまり残ってなかったのですが、わりと混沌としていました。(^^;
けれど、2017年はじめに「ピーナッツは生後半年から少しずつ食べると、将来アレルギーになるのを防ぐことができる可能性がある」という研究が発表され、さらに「微量のピーナッツ成分と乳酸菌を混合したサプリを飲むと、ピーナッツアレルギーを緩和できる」という報告が出てきました。
日本でも、小児の卵アレルギーに行われる「減感作療法」というものがありますが、同じですね。
これもまた長くなりそうなので、詳細はまた違う記事でまとめたいと思います。
今日はここまでです。
長い文章にお付き合いくださり、ありがとうございました。m(_ _)m